皆さまの家づくりにきっと役立つ、
そんなお話。
MENU
社長コラム【間取り・設備編④】
2023年8月25日(金)
  • 社長コラム【原本】

空気の性質を考えた設計の工夫

2022年、暑苦しい夏がとても長く続きました。

広島で観測された真夏日は何と85日もあり、観測史上最多記録とのことです。(観測地点:広島市中区)

2023年も毎日暑いのでもしかしたらこれを超えてしまうのではないでしょうか…。💦

逆に冬はというと、10年に一度の強烈寒波が日本列島を覆いました。

地球温暖化に起因する異常気象が増えていることを肌で実感します。

更に、電気などあらゆる燃料費も高騰しており、「快適」に過ごすための負担が急激に重くなっています。

どのようにして家計を守るのか、家計防衛は待ったなしです。

 

自然エネルギーを使った快適な家づくり

これまで、高断熱・高気密に創エネルギーを組み合わせた快適な家づくりについて考えてきました。

今回はちょっと視点を変え、自然エネルギーの【風】と【光】に着目した「快適空間づくり」について考えてみましょう。

 

【風】を使った「快適な家づくり」

まずは【風(空気の質)】のお話です。

今でこそ暖房と冷房で室内の温度を調整できますが、そんな技術がなかった昔の人たちは、自然の原理をうまく使った知恵で暑さ・寒さをしのいでいました。

その好例が、京都の町屋です。

 

町屋の特徴

京都はその風土の特徴から全国的にも夏の残暑で有名な地域の一つです。

江戸時代以降に建てられた京都の町屋は「うなぎの寝床」と言われ、表の店舗から奥の母屋まで一本の細長い土間でつなぎ、その間に中庭を設けるのが基本的な間取りでした。

実はこの町屋の間取りが【風(空気の質)】をうまく利用した天然の空調システムになっていたのです。

 

天然空調システムの仕組み

①昼間、中庭をはさむ2つの家の瓦屋根が太陽に熱せられます。

②空気は暖かいと膨張して上の方へと上昇し、冷たいと下に溜まるという性質によって上昇気流が発生。

(上昇気流を発生させるには中庭の広さとの絶妙なバランスのもとに成り立っています。)

③するとこの中庭の空気が負圧となり、小さな気圧差によって屋根の上昇気流に吸い上げられるように昇っていきます。

④家の中を繋げる土間を通って路地から風が引っ張られ、家の中に風の流れが生まれます。

このように風の流れが生み出され、家全体がまるで大きな扇風機のようになります。

 

さらに涼しくするひと工夫

朝や夕方、路地に打ち水をすることで冷えた空気を発生させ、そのまま風の流れに乗せて室内に運ぶことができるのです。

これは気化熱(液体が蒸発するために必要な熱)が奪われ、冷えた空気が生まれる仕組みを利用しています。

このように先人たちは、空気の性質をうまく利用して「快適」に過ごせる間取りを考えていたのです。

では、家づくりに空気の性質を取り入れた先人の知恵に習って、現代の家づくりにおける活用法を考察してみましょう。

 

昔の知恵を活かした「ドアを大きくして垂れ壁をなくす」設計

熱帯夜が続く夏の寝室ではエアコンをつけて寝る方がほとんどですよね。

比較的狭い寝室では、エアコンのオーバースペックもあり、体が冷えてしまう、なんてこともあります。

どうせなら他の部屋も一台のエアコンで冷やせたら理想的ではないでしょうか?

しかし、夜、目を覚まして廊下に出るとドアを開けていたのに廊下だけ暑い!という現象が起こります。

これは空気の性質上、廊下の天井近くに溜まってしまう熱が原因です。

そしてその暖かい空気を停滞させる原因が、ドア上部にある垂れ壁だったのです。

 

空気の流れを見てみると、寝室の冷えた風は下に降りますが、暖かい空気は廊下の上に溜まったまま循環していないことが分かります。

熱が溜まった空間は一向に涼しくならない上に、廊下に出れば熱放射を受け体感温度が高くなります。

 

垂れ壁を取り外してドアを大きくすると廊下の上部に溜まった熱が動き出し、寝室からの冷たい空気により空間全体が冷やされていきます。

エアコンと同時にサーキュレーターの使用が勧められているのは、溜まりやすい上部の空気の流れを変えて循環させるためです。

 

 

冬の空気の流れ「コールドヒーティング現象」

続いて寒い冬の空気の流れについて考えてみましょう。

どの部屋も窓辺が一番寒くなり、冷やされた空気は下降気流を生み出し、室内に流れ込みます。

さらに暖房によって暖められた空気の上昇気流に押され、冷たい空気は足元へとどんどん流れていきます。

コールドドラフト現象と呼ばれるもので、足元の冷気によって体の芯まで冷え、実際の室温よりも体感温度が低くなります。

ヨーロッパに学ぶ寒さ対策

寒さの厳しいヨーロッパの地域では、このコールドドラフト現象の対策として、セントラルヒーティング(暖房器具)を窓の下に置くスタイルが一般的となっています。

空気の流れに配慮した暖房システムにより、どの部屋も温度が均一に保たれ、「快適」に冬を過ごせるようです。

 

日本の住宅が寒い理由

日本の住宅ではセントラルヒーティングのような暖房器具を目にすることが少なく、ベッドの頭上部に窓を配置する寝室が多いようです。

 

 

このため、コールドドラフト現象による冷えを起こしやすい間取りになっているケースが少なくありません。

暖房をつけていても体感温度が低くなってしまい、寒さの大きな原因です。

この現象も踏まえて、寝室のベッド・窓の配置を考えた設計をしていきましょう!

 

次回は、【換気システム】に着目してお話していきます。

 

記事監修代表取締役社長
旦壮之助

広島のハウスメーカーとして 「人と地球に優しい 家づくり」 を通じて、 大切な家族と過ごす空間づ くりを提案。 2022年にはUa値 0.25を達成し、 高断熱・高気密や省エネルギーな住宅づくりにも 注力している。

アイレストホームの家づくり ▶